鈴木寛顧問メッセージ

 これまで教育が基盤としていた知識偏重型の試験は、工業型社会では有効なシステムでした。暗記力と反復力を身につけ、マニュアル通りに正確に仕事ができる人材が社会的要請だったので、理にかなっていました。

 しかし、2040年にはシンギュラリティ(人工知能が人間の知的能力を上回る段階)の時代が来ると予測されています。今年の15歳が40歳になったとき、人間ならではの仕事をして生き残るために、人工知能が得意ではない感性や個性を駆使して「個別解」を見い出し、それをチームで実現していけるような力を育んでいかねばなりません。

 さる8月20日、新しい学習指導要領づくりに向けた、中央教育審議会の教育課程企画特別部会の論点整理が終わりました。報道でご案内の通り、高校では、国内外の近現代史を重点的に学び、暗記偏重の歴史から歴史的思考力育成を重視した「歴史総合」、現在の公民よりも社会参画を意識した「公共」、数学と理科を横断的に学ぶ「数理探求」などの新しい科目を設けます。そして、児童生徒が主体的に学び問題を解決する「アクティブ・ラーニング」を導入していきます。

 こういったアクティブ・ラーニングを教育現場で実際に実践していくためには、皆様と協働しながら、アクティブ・ラーニングについてもっと議論をしていく必要があります。アクティブ・ラーニング学会が、現場の先生方、研究者の皆様、教育産業で働いておられる皆様、NPO法人として教育を支えてくださっている皆様が集うプラットフォームになっていくことが、アクティブ・ラーニングの普及のためには非常に重要です。ぜひ、皆様と共にアクティブ・ラーニングを前に進めるためのネットワークをつくっていきたいと思っています。

東京大学教授 慶應義塾大学教授
鈴木寛